「自選一行レビュー補遺」「平原演劇祭_2006」第一部 移築民家とアタラシイ「ゲキ」Ⅲ

梅雨明け空




2006/07/30 (Sun) 「第5回 平原演劇祭 2006」第一部 移築民家とアタラシイ「ゲキ」Ⅲ (13:00-16:00 ¥0-) @姫宮・東武動物公園「宮代町 郷土資料館・加藤家住宅」。



 


第一部について、覚書。...難解であり、また、判る人には辛口かもしれない「宮目姫/無名の姫」の二つの物語で、受け入れ易い三つの劇を挟んだような形。
図らずも、高野竜さんの、オレサマの演劇祭ではなく、エゴの発露とも違う、社会化され、開かれた、劇作家としてのプロフィールが示された日(プログラム)だったと思う。満足満足。コノシロの焼いたやつ、まるまる一匹食べた。加藤家住宅。西側?の竹藪越しの風が涼しい。




劇団12『現代・紅葉野 〜 諱』


(15:25-16:00_¥0-)


「いみな」。宮目姫伝説による劇。今回は高野竜さんの手を離れ、劇団12主宰、志賀未奈子さんによる。
文学より漫画で育った世代だと思うが、性別を入れ違えた人物や役柄交換。魔術師(妖精か)など、得意な領域にもってゆき、自由に作っている。
その中でも「捨て駒にされる末っ子の姫」など、この土地で上演される意義を秘めた台詞が出てきて満足だった。375ヤリヨル。
ちなみに...ミニのセーラー服、まぶしいです。昨年から始まった、「宮目姫」にはセーラー服、の伝統はゼヒ定着させるように。


みやしろ演劇パーティ『ざりがに盛衰記』


(14:50-15:15_¥0-)


幼児の男の子2人含め8人。主人公の小学3年のひなこちゃん。思春期前のクリアな人間のパワーがすーっと出てくる感じがとてもいい。
人事(学校社会)と自然の霊の間を行ったり来たりする、“平原”版『ナツノトビラ』。もっともこちらは冬を越えるのだが。
僧侶と用務員さんが出てくるところが心憎い。短編小説的うまさがある。
...スティーブン・キング 《IT》の溝川のシーンを思い出す。



関東楢ノ木会『注文の多い料理店


(14:20-14:45_¥0-)


Tシャツにカーゴ、ジーンズという服装の7人による。ナレーターと二人の紳士、それ以外の役割を交換しながら、物や建物までマイムで表現した劇。真上からみる視点をつくったり、なかなか斬新。高野さんのルーツに関係ある。超現代劇との間の緩衝材(とちり多かった)。



大野修司フルスロットル『霞ケ浦風土記 最終話 船頭の女房』


(14:00-14:15_¥0-)


英訳もある近代土浦の聞き書き名作。韓国のタルチュムの様な仮面を被って。嫁取り・苦労・銭が出来てくる・浮気を嗜められる・身体を悪くする...。妻には苦労をかけ通しだったなあ、という内容。
日本では“恨”をほぐすという言い方はしないが、考え方はわかる。見にきているお母さんたちの“恨”を解きほぐす劇。
高野竜さん伴奏。



チラバルイノリ『シジミSF 〜 コハダの美味しい召しあがり方』


(13:00-14:00_¥0-)


三人の流浪の歌姫なのか、次々と、ずれながらも似通った内容が女の子たちによって一斉に語られる。それぞれ「あまえんぼ」「直角」「ゴリラ」とTシャツに書いた上から赤い着物、かいまきなど。
宮代町には宮目姫の他、コノシロを焼いた匂いを身代わりに追っ手をまいた名前の無い姫の伝説があるという。ク・ナウカの一幕目が封建主義の崩壊の瞬間なら、こちらは古代の社会に封建制度が入り込んでくる時を描いたものだ。制度の毒気を取り除くためには、時間を逆上るしかない、と云うように、酔っぱらい女子大生が人間の誕生以前の地質学演劇を妄想する。
小牧のナツキさん唄がうまい。