「古」鳩沢佐美夫『対談 アイヌ』(1970) 〜 遺稿『沙流川』(1995)。草風館(東京都千代田区)刊。
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- 作者は1971/08/01実家近くの沢へ行く途上で吐血死。脊椎カリエスを病んでいた。享年36歳。
- 序章。
- 風聞。
- ☆アメリカの黒人問題の過激化はどうかな?
- ★普段は意識しないけど、ウタリにもあんなパワーがあったらな、とは思う。
- ☆世界文明のパイオニアは白人で、黒人は牛馬扱い。僕は“アメリカの黒人問題”でなく、“世界の、人間に対する問題”と見たらどうかと思う。
- ☆南アフリカに入国しようとして拒否された日本人スポーツ選手がむくれた。こんな人たちにアイヌ人の真底を受止められるか。
- ☆日本国内には、在日朝鮮人問題と部落差別問題がある。アイヌ人の問題は、より複雑な要素を帯びている。
- ★ばらばらにされているという感じがするわ。
- ☆アイヌということを売込もうとする層と、口を噤む階層がある。問題提起しても利用される懸念もある。
- 原点。
- ★和人の恋人から、結婚した後、親や親戚が出入りするのは御免だと言われた友達。結婚式に出て欲しいと相談したおばちゃんからは「勝手にしろ」と。そのまま家出してしまった。
- ☆問題点を分析してみよう。日本人は家柄血筋を重んじてきたから、民族の違いという視点で論じ切れないのでは。結婚問題は一般に貧富の差でも生じる。
- ☆日高管内の住民に関わるデータで妙なものがあるんだ。
- ☆というのは、この地域はアイヌ系住民の割合が道内一ということで、行政へアイヌ対策のデータを提供しているようなものなんだ。
- ☆生活保護の状況は、一般平均2.5%なんだけど、アイヌ人世帯に限ると15.8%であるとか、3割のアイヌ世帯が非課税であるとか。そんな新聞が記事に出て、“旧土人環境改善策”という施策になったんだけど。
- ★わたしの知る限りでは、そんな困った人はいなかったように思うけど。
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- ☆行政の人は否定しているが民族別の住民数の細かい資料が実際にある。住民に極秘アンケートをしたといういかがわしい意識調査結果まであるんだ。
- ☆職業は農漁業と日雇い労務者が半々。差別体験有る52%。無し48%。差別がある41%。ない48%。...これは、どうやら限られた地域からの回答ではないかと思われる。
- ☆資料を見せてもらった町議の貝沢さんの話。国から3億。地方自治体からも3億の上積。政府の試算をなぞるなら1世帯12万円の恩恵。これが本当なら道内25,000人のアイヌは皆マンション住いになっているはずだ。
- ☆生活館12戸。共同作業場7戸。低家賃住宅90戸。他に上水道工事。...このような膨大な事業の数々はどこにいったんだろう。まさに物の言えない哀れなアイヌじゃないか。
- ☆さっきの意識調査が出鱈目だというのは、旧土人保護法の存続を望んでいる28.6%。この辺りを指しているんだ。身の周りで君の様に結婚差別の問題が起きているというのに、存続を望むなどという理由がどこにもあるはずがないじゃないか。
- 告発 其一。
- 告発 其ニ。
- 告発 其三。
- 錯線。
- 提言。
- 終章。