2009年06月 月間 見た聴いた読んだ (6月頭)。

あおいぽすと



  • 原口典之「社会と物質」展。 @横浜 馬車道BankART Studio NYK」。
    • 真性「もの派」。建物全3階ともぶち抜きで展示。巨大作が多い。ハードコアだと思うが、これだけ少ない展開で40年というのはきびしい。...ふりかえって、70年代80年代の美術系エディターというのは、あんまり発想が無かったよなあ。


  • テキーラ・テ・キエロ tequila te quiero 〜 アートに恋して」展。...門田光雄(ネッチョリ筆跡)/鈴木亘彦(樹脂の飾り)/彦坂敏昭(ご存知)/ほか @原宿・明治神宮前「ギャラリー・ニモード」。...キャットストリートより一本南側の通りを奥へ奥へ。カフェを改装した画廊か。安いものも出しているが「飾り物」がほとんど。ポストポッパーズの面々と大して変わらないものもある。
  • 003. 「TAGTAS/FORUM〈条件なき大学〉第2期」#03 菅孝行『近現代演劇・様々な起源 〜 ラディカリズムと転向をめぐって』(...19:40-21:10/..._¥1,000-)。 @御茶ノ水「フリースペース・カンバス」。
  • 『neoteny japan 〜 高橋コレクション』展 (¥1,200-)。 @上野「上野の森美術館」。
    • OLさんや修学旅行の生徒に混じって。...ルーブル展なら80分待ち。ネオテニーは待ち無し。快適。みんな絵に顔をくっつけて細部だけ見ている。そいつらがどくまで見られない。映像のところは人だかり。こういう時間喰うものを通路際に設置するんじゃねえよ。絵の見方をある程度教えないといけないんじゃないか。
    • 1F。近眼の人のための絵画。または冗談美術。...鴻池朋子さんって全く知らなかった。売店にグッズが沢山。売れっ子さん。/村上バカボンひどすぎ。/野菜銃は、お笑いとしてもっと展開できなかったのかね。
    • 2F。海外に売るために大きくしてみましたよ。または凝りまくり過重手法もの。懲りずによくやるよ。...池田光弘作品。初実見。割とシステマチックに描いている感じがして残念。でかくて高い絵だ。
    • 階段踊り場から売店の裏。教授の作品だよ。高値だよ。サブカルだよ。...大嫌いな芋束出ている。引き伸ばした劇画だよな。/小谷元彦作品。耽美デザイン。だがそれなら糸はピンと張ってほしい。ゆるみ耽美。工芸的。
  • 岡山県立美術館」。特別展『朝鮮王朝の絵画と日本』(¥1,000-)。...大規模で点数多く足が痛くなってくる。こちらも常設展の洋画は今回全部かたずけてしまっているそうだ。/朝鮮近代の「張承業(チャン・スンオプ)」の掛け軸。朝鮮渡来の大阪「四天王寺」の仏陀と弟子たちの大きな紙にかかれた絵(涅槃図?)。民画の変な猫。「雪村」の本物と伝雪村の偽筆。「若冲」デジタル絵画(枡画)。壮観な民画の本棚屏風。葡萄の図像学など。面白い品物結構混じっている。しかしバラツキある。多過ぎ。
    • 「張承業:吾園」という画家については、イム・グォンテク監督《酔画仙》という映画がある。政治的混乱の時代に50代で行方不明。当時交流のあった日本人記者が「登仙した」と書いているらしい。
  • 林原美術館」。企画展『躍動と静謐の美』(¥300-)。...何でも企画展だけで、常設展示は無いのだそうだ。何が展示されているか事前に問い合わせるかネットで見て欲しいとのこと。/今回は東洋の陶磁器と掛け軸。衣装若干。...刀剣、日本の絵画は無し。/初期備前焼 水入れ(蓋がピッタリとしなくてもいい)。ナツメの蓋の細部。江戸期のデザイン(兎と月一体化図案)。中国の動物陶器。中国の初期の焼き物の細部(縁の処理とか)。韓国の瓜の形の青磁器など。掛け軸は古くてよくわからん。
  • 「後楽園」(¥300-)。...文章資料が全然無い(見落としか)。市内のいろんな場所に古地図が掲げてあるのだが、現状とほとんど一致しない。どこがどうなったの。/巨大庭園。水の扱い方は相当工夫している。最初期は芝の代りに水田と畑が作られていたとか。






  • 002. 劇団どくんご『ただちに犬 Deluxe』岡山公演最終日(3日目) (19:33-21:42 ¥2,500-) @岡山 山陽本線 北長瀬「岡山ドーム・南側多目的広場・特設テント」。

  • シンポジウム『谷川雁を読みなおす』。 @表参道「青山学院大学・6号館」。...資料だけもらってきた。河出書房新社、一種類きりのムック安売りに来ていた。かなり呆れた。

    • 鵜飼哲「二人の〈雁〉を相続するために」(0).あたかも〈彼〉がいるかのように...。1).出発点・戦争。2).工作者/詩人の自己供犠。3).学ぶ=問うべきポイント。4).遺産の二重構造。)。
    • 酒井隆史「無数の情動からなる潜在的地平へ」(1.距離の効用。2.地理の断層。3.狂った二重構造。4.二重構造(論)の原点。5.小集団と自立の思想。6.発生主義から構成主義へ。7.「挫折の物語」を紡がぬこと。)。...「社会か、地理か」。
    • 佐藤泉「固有名の向こう側へと」(1.大正闘争。2.サークル村。3.詩語。?.「アジア」と「集団創造」)。
    • 仲里効「意識の海、あるいは新たな地図の描き直し」(1).国家併合を問い直す。2).交差する視線/谷川雁中平卓馬。3).造型された〈無〉〜〈ラ〉音の非在、そして「琉球共和社会憲法」構想。)。
    • 岩崎稔「編者として あるメモランダム」(・谷川雁をめぐって工作すること。・谷川における二重性についての卓見に接して。・もうすこし大きなコンテクストとして。)。
    • 米谷匡史「『流民』のコミューンを歩きなおす」(1.「流民」の交通。2.革命詩人であること。3.コミューンのネットワークへ。4.今後にむけて。)。
    • 米谷匡史「革命詩人から人体交響劇へ」再録(1.谷川雁さん再読の気運。2.不可視のコミューンを幻視する。3.「集団」のなかで息づく思想。4.追伸・「幻の沖縄講演」について)。
  • ショウイング「100 degrees Fahrenheit vol.1」...梅沢和木/笹田晋平/高橋つばさ/彦坂敏昭。 @馬喰町・浅草橋「ギャラリー・カシ(CASHI/華氏)」。
    • 細かい作業で大きな画面を埋める傾向の若手作家か。正直作品に特段感動はない。彦坂俊昭さんの初期作品は確かに良かったのだが。


  • 「おそばで猪口と豆皿 展」 @浅草橋・馬喰町「マキイマサルファインアーツ 1F」。
    • 12 人の女性陶芸家。+男性2人。赤っぽい肌。引っかいて模様。タイルのような。動物シルエット豆皿。/「深川ラボ」の作家の絵画小品も並んだ。
  • シリーズ展「TEAM (Tokyowondersite Emerging Artists on Mezzanne)」MIHOKANNNO(ミホカンノ)「Hello! MIHOKANNNO」...千葉雅也、松原壮志朗、榎倉冴香、福永大介、COBRA ほか。 @渋谷「東京ワンダーサイト渋谷」。 
    • 印刷出力作品(万代洋輔さん)の他は、露骨に「ニューペインティング」ノスタルジーではないか。榎倉さんは作品内容にバラつきがある。千葉さんは中堅。松原ガッカリ。センスがよくわからん。
  • 荒川修作 + マデリン・ギンズ「三鷹天命反転住宅」 @JR 武蔵境 南口。小田急バス境91。...天文台北。大沢十字路。「三鷹大沢郵便局」裏。「ハウジングプラザ三鷹」真向い。
    • バスに乗れば、10分位で行けますよ。人が住んでいるから、見学会かなにかではない限り中は見られない。外から見てもしょうがない。


    • 大混雑していると評判の上野の『阿修羅展』。夜の延長時間を狙って行ってきました。ギリギリ19:25に入ったんだけど、やはり混んでました。/別室に仕切られた「阿修羅像」のまわりを群衆で囲んでぐるっと一巡するんですが、お酉さまの縁日みたいに沢山人が群がってました。以前に京都で遠くからチラっとみた記憶があるんですけど、赤くて、意外に小さい。今回は真後ろの処理をどうやっているかが目の当たりに出来るのが貴重らしいです。
    • 何故だか足下から見ちゃうんだけど、台座の作りも精巧。十大弟子の若い僧の立ち姿の感じ。四天王が踏んでいるアマノジャクのデザインが一つづつ違う所が良かったです。名品は、何か生きている気配みたいなものを漂わせてますね。
    • 付記。人物の体の小ささ。おそらくこれが奈良時代の人間の等身大なのだろう。手が破損してしまっているケースが多いのが残念。垂直線や、人体のプロポーションが少し歪んでいる感じがするが、彫刻から生気みたいなものが感じられる。表情もそうだが、骨の浮いたボコボコした胸とか、小さい足とか。
    • 図録どこで売ってるのかわからなかった。
  • 001. 「TAGTAS/FORUM〈条件なき大学〉第2期」#02 菅孝行(かん・たかゆき)『日本近代と天皇制 〜 われわれの演劇を載せている場について』(...19:38-21:02/...¥1,000-) @御茶ノ水「フリースペース・カンバス」。
    • レクチャーを途中から。討議の部分は聞かず。...はじめて見ましたよ、菅さん。声が高く、熱をこめて、身振り手振りを交え話す人物。陽性な印象。適度な脱線。
    • 「近代天皇制の形成過程」。...この章後半から。/...上からの資本主義・ブルジョア化。最近の鴻池の醜聞。/明治憲法。臣民の人権は天皇の恩恵によるもの。/脱亜膨張。/明治40年代の教科書分析。天皇主義浸透。色川説。/権力の不安。「朝鮮支配」と「大逆事件(非国民排除)」が二大事業。/「天皇巡幸」が「海の日」の起源。
    • 帝国主義国家日本の天皇制」。...ホブズボームの二十世紀規定。戦争と革命の世紀。/科学・合理主義とそれへの不満。激動期。/政治と芸術を共に手がける人物が多い。大杉栄ロマン・ロランの訳《民衆演劇論》。/関東大震災の時期の煮詰まり具合。難波大助事件。/「築地小劇場」はリアリズム演劇の牙城ではない。能天気なアバンギャルドの演目が多かったのに、リアリズム演劇代名詞の様に言われるという演劇史の不思議。浅利慶太の見解について。/...西欧アバンギャルド論はかなり荒っぽい。
    • コミンテルンの理論と天皇制」。...共産主義者の日本権力分析。素朴な「労農派」。スコラ哲学的・分離主義の「福本イズム」。/組織論で論戦・分裂。コミンテルンの「27年テーゼ」で再建。/ソ連の国家エゴに左右され、自滅した面も。/「講座派」。天皇は最大地主。天皇制はファシズムの定義に当てはまらず。/「トロツキスト」のレッテル張り。分断・弱体化。/右翼の理論。北一輝の政治主義。権藤成卿「社拭(しゃしょく)論」はユニーク。/1928年。国体否定・私有財産否定は「死刑」。...スパイ。「アジア的生産様式」という隠語。/三木清、尾崎秀実。奴隷の言葉で国際連帯を画策。/内乱の好機を迎えるために翼賛につく、という退廃。
    • 「戦後天皇制 〜 民主主義の陥穽」。...敗戦後、別の天皇制に。「皇室典範」を一般法に格下げ。「国家神道」の形態は温存。/尾高朝雄「ノモス主権論」「ノモス」=伝統。国民主権ではない。「巡幸」再び。猫背の老人。/皇太子へ移行。/天皇は権力を持たず暴力性が無くなった。/天皇主義者が暴力的な政治の場面に派手に登場するようになった。
    • 「歴史的に形成された集合的無意識」。**
      • 「戦後天皇制の自覚的理論化過程」(この部分は原資料をいかして)。...60年代激動と70年安保の敗北の意味の検証。/なぜ大衆を獲得できなかったのか。/我々は何に負けたのか。/権力の象徴は機動隊の壁か、自覚されざる内面の規定か。/統治の内部に身を置き、権力を権力として承認させる契機としての権威が存在する。/それぞれの国家に幻想の共同性の固有の媒介がある。絆として幻想される価値の源泉がある。戦後日本の場合それが象徴天皇性なのではないか。集合的無意識としての天皇。(自覚されているのは民主主義 主権在民 基本的人権 平和主義)/他者を自覚できない歴史意識。侵略責任の希薄さ。外部不在の日常性。差別への無自覚。
      • 「政治儀式過程に浮上する天皇」。
    • 「平成天皇制というアポリア」。...今上天皇明仁さんは立派な人物だと思う。彼が本当に救われるには天皇を辞めるしかないんじゃないか。
      • 私見。...日本の国という国境線が破られず、ある程度の豊かさを確保していることから来る「死角」「圏内」というのだろうか。バリアーみたいなものがある。これは外国と比較できないので勘違いかも知れない。/▲「ネトウヨ」の、外国人への頭からの侮蔑。流民労働者への侮蔑。人格無視。差別。あれらの根拠が「天皇制」だというんだろうか。そうなのか。/▲『甘えの構造』『タテ社会』『世間論』等の日本人の精神分析、社会分析を検討しなくていいのか。...日本人は精神分析できない、というフレーズを読んだことがあるが。/▲ 70年安保で新左翼が負けたのは、天皇制云々の影響だろうか。セコイ先陣争いに熱狂していた新左翼の実態を「大衆」が見透かしていたからじゃないのか。/▲ 太平洋戦争敗戦・無条件降伏で、日本の体制が崩壊した訳ではなかった。社会資本もまあまあ温存されていた。支配体制に属する人間は事実上生き延びて戦後も変化は無かった。敗戦は革命ではなかった。/▲「明治維新」はゆるやかな革命の性格は持っていた。江戸末期の「尊王派」「皇国史観」の文献、人々の行動。後世の人に価値を感じさせ動かした細部が明らかにならないか。/▲ 同和教育で肝心なことの一つは、差別の身振り、サイン、具体的な細部・行動パターンを消して、親から子供へ伝達させないことだと思う。『特殊部落地名年鑑』などは「焚書」してこの世から消滅させて一向にかまわない。「歴史修正主義」の逆利用も有効な手法の一つだと考える。「天皇制」に関しても、どうして昔の過激派が、資料廃棄、遺跡の破壊等やらなかったか若干不思議。学生だから?