2009年11月 月間 見た聴いた読んだ (1)。

えだおとし


  • #01「宇野重吉演劇賞」授賞式 (13:30-14:12)・高野竜 作『アラル海鳥瞰図』リーディング上演 (14:30-15:58)。 @福井「福井まちなか文化施設・響のホール」。
    • 特別に審査委員長「別役実」氏から賞状・賞金・トロフィーが手渡される。講評「演劇史上でもかなり珍しい手法による戯曲。グローバリズム、ボーダーレスといった状況を実感をもって伝えられる稀有な作品」。/改めて作品に接して。核心に近い一節「アジアの芝居には人間が出てこない。...演劇には機能がある。その世界ごとに特異な主題を持っている。...アジアの演劇の主題は、鎮魂だよ。滅びた人々の思いを伝える...」には改めて感動。グローバル化で、のっぺりと削られつつある人間の歴史のヒダを、克明に記録し、伝えようとするもの。アジア演劇、人間の文化の正統と抵抗の行為としての芸術。名作だと思います。
  • 柿喰う客 × 三重県文化会館『スポーツ演劇・すこやか息子』(18:30/34-19:13_¥1,500-)/after_talk(19:21-19:41)。 @津「三重県総合文化センター・小ホール」。
    • 原野の真ん中に突然突っ立ったサントリーホールみたいなハコモノ施設。「中屋敷法仁」さん、意気軒昂なのはいいが、冷静になったほうがいいような。一連の事態は奇妙で滑稽じゃないですか。苦笑で済む事態だったらいいのだが。劇は、陳腐な家計図を、フラットに、エアロビのフォーメーションにのせて描いたふざけたもの。時間にして40分。アフタートーク。「ウィニングランするマラソン選手は醜い。アルプス・スタンドに一礼する甲子園球児はもはやアスリートではない。唯の人間さんです。そんなものは見たくないのでチャンネル変えます」。そんなに切り分けられるものだろうか。

  • レイチェル・ダッド展。 @栄・上前津「セアン」。...中部で見たテキスタイルの作家は皆影響下にある。そうでないならば、テキスタイルアートにはある種のパターンしかない。
  • 西條周子「チョークアート 2009」 @名古屋「丸の内駅ショーウィンドウ」。

  • 「犬山アートコンパ Vol.3」展示。 @愛知 犬山「ダゴバギャラリーキワマリソウ」。...3人選ぶのが厳しいくらい。ほぼ全部どぎついイラスト。
  • フ透明少年 / 漆山美術館(林慎治ほか)インスタレーションとライブパフォーマンス「POOL MODERN」 (13:00-13:15/-39 ¥0-)。 @名古屋 大高・左京山「大高緑地公園・プール施設全体」。

  • 佐藤昌宏「我永く山に還らん」展。 @岐阜「ギャラリー・パスワールド」。※溝旗公園脇。...アルチンボルド、浮世絵の寄せ絵、蝦蟇仙人と李鉄拐仏画の画題や構成を下敷きにした細密幻想画。
  • 川喜田半泥子のすべて」展。 @岐阜 多治見「セラミックパーク・ミノ / 岐阜県現代陶芸美術館」。...三重の資産家・実業家の余技としての作陶。やがて若い陶芸家を指導するようになる。伝統的な器からの切り離し。
  • 劇団 pH-7 + 劇団 ☆ 唐海賊 合同公演『遊星カノン 〜 銀河の彼方でまた逢おう』(20:00-22:03_¥2,500-) @名古屋 新栄町「pH-7 地下劇場」(-11/23)。
    • 地下の劇場の真ん中に世界樹がにょき。「維新派」的な敗戦後の少年少女だけの世界が、妖しい紙芝居の世界に引きずり込まれる。さらにその紙芝居の世界をコントロールしている者がいるのだという。 ▲ サイバーものとバイオホラーものが誤解で結び付けられたかのような、夢オチでなければ終われない世界。余りにもアングラな劇構造。美人の女優さん、大のオトナのオバカで贅沢な遊び。これが役者のはかないスゴミというものか。 ▲ 劇の半ばで魔女が人類の歴史を要約してみせるのだが、これが若干古い感じがして残念。マクガフィンの幻の木の実、世界樹の赤い実、「リンゴの歌」、「林檎の木の下で」とイメージの遊びが一本通っている。

  • 犬飼真弓「鏡像」展。 @名古屋 丸の内 長者町繊維街「えびすアートラボ」。...大作4点。唇だけ描いた小品1点。幽霊の様な瞳の無い女の絵。正面から。二重に描線が見える1点がおもしろいが、そんなに珍しくも無いような。/旧作と比べると、リアルさから離れていっているみたい。
  • よこしまブロッコリー『ライフ・イズ・ア・ストレンジ』(19:30-21:02_¥3,000-) @名古屋 吹上「千種文化小劇場(ちくさ座)」。...木の板目張りがきれいな音楽ホールと兼用の劇場。
    • 映画『ワンダフルライフ』のもじり的な構成。若い男女、あるいは中年にさしかかる位の男女の恋愛感情にかたよっている。

  • 「高木英雄」展。 @名古屋 丸の内「ウェストベスギャラリーコヅカ」。...大きな紙細工群を三部屋に展開。 
  • 「佐藤行衛 Live」(19:30/40-20:30...¥2,050-)... 1. 臼井康浩 + 佐藤行衛 (19:40-19:55) /2. 臼井康浩 + マルコオーレ・カテキン (19:58-20:17) /3. 佐藤行衛 + Andrew Farmer (20:19-20:30)...第2部は聞かず。 @名古屋 御器所(ごきそ)「なんや」。
    • 佐藤さん。観光ビザで韓国にわたり「弘大前インディーズ」の中心的人物に。「コプチャンチョンゴル(「韓国風モツ鍋」の意味)」という韓国語フォークロックバンド結成。1999年韓国で CD をリリース。2000年から即興演奏のノイズ音楽「プルガサリ(ヒトデ)」もスタート。2005年 強制送還の危機【乗り越えた】。2008年 本名名義のソロCDを韓国でリリース。ギターを机の上に横に置いて、弦の上に鍋、子供の玩具、携帯電話などなどを置いて音を出すという方法。長髪、髭、サングラスの陽気な人物。「虫丸企画」公演で、一番下手で演奏していた。
    • Y字路に建つ壁画のある沖縄居酒屋の2階お座敷が舞台。臼井さんというギタリストがホスト役で、ゲストや若手を呼んで二人で演奏するというスタイル。エレキギターによる即興ノイズ音楽の掛け合い。

  • 藤條虫丸(ふじえだ・むしまる) と フィジカル・ポエッツ ダンス公演。一部「舞音交響詩 跳梁八紘 〜 献詠・歌舞伎昌三」。二部「天然肉体詩 虫丸独儀・静かな庭 '09」。(19:00-20:05/20:19-21:01) @名古屋 大須観音七ツ寺共同スタジオ」。
    • そもそも「芦川羊子」さんが異論を唱えているうちは「舞踏」を論じることは出来ないといっていい。慶応大学、京都造形は事態をこじらせているばかりなり。ただ優れたダンサーは輩出しているので観客には観て楽しむ自由はある。フィジカルポエッツは力量にバラツキがあり、衣装も普通のスポーツウェアあり、水着が見えてしまうケースあり、子供を舞台にあげる場面ありで、ゆるく楽しんでいる様子が見えお客としてはやや残念。そんななかでも「牧桃子」さん「姫ひょっとこ」さん、チマチョゴリの衣装の人など納得できる演者もいたように思う。一部は虫丸氏は朗読だけ。声が「児玉清」ばりの美声。詩と踊りの絡みもやや研究必要か。
    • 二部はソロ。昨年の演目の改訂版らしい。細かい演技、マイム的な場面からはいる沈黙劇的なパフォーマンス。伸びて背中が破れたオレンジ色のランニングシャツに短パン。ホーチミン髭にパナマ帽の日焼けした肉体労働の男が、砂浜で、という情景。種か虫かわからないものを追いかけ、深みにはまって行く感じだろうか。緩急たくみで隙がない。そもそも脚の筋肉の張り、血管の浮き出し方が常人のものではない。★

  • 「いなおかひろみ」作品展“続・土鍋と小物たち”。 @名古屋 大須観音「モノコト」。...イラストレーターの作った食器、文房具、調理器具。
  • 「葉栗剛」展。...ヤクザ、不良少年、走り屋 のデフォルメの効いた大きな人物木彫。大作200万円くらい。/「近藤千鶴“パライソ”」展。...花札、マッチの箱などのデザインに通じるおふざけ風刺画。 @名古屋 桜山「Gallery APA」。
  • 宮本千愛「万華鏡」展。 @名古屋 丸の内「ダーツ & カフェ・カタツムリ」。...切り絵をパソコンで取り込んだ画像。万華鏡模様とダーツの的を関連付けている。
  • 水谷一子(みずたに・はじめこ) / 北村尚子 / 加藤麻子...「3人展 コスモス KOSMOS」展。 @名古屋 栄「Art Salon 金工堂 西店」。...★「ワイアー(針金)・アート」の水谷さん。シリアスアートではないが、とてもおもしろい。コクトーのデッサンみたい。この人はもっと全国区ではっきり知られて良い。/「モビール」のアレキサンダー・カルダーを追いかけているのだ。 
  • 舩橋明裕「ホメオスタシス」展。 @名古屋 上前津「ガレリア・フィナルテ」。...パズルの表面を拡大したような色面絵画(木彫も一点)。値段高い。
  • 野戦之月海筆子『ヤポニア歌仔戯・棄民サルプリ』(19:02-21:44_¥3,200-) @吉祥寺「井の頭恩賜公園・西園 / ジブリ美術館 裏・特設テント劇場」。★★
    • 東アジア諸民族や米艦隊が覇を競う「尖閣諸島魚釣島」海域を舞台に、亡霊や霊媒、海賊、泥棒、陰謀家、神話の神々が絡み合うマジックレアリズムの劇。沖縄と台湾の民間の伝承や神話が深く導入されている。▲「刑天」という首を落とされたままの中国の戦いの神が、水産工場のパートのおばちゃんに憑依して労働争議に結びつくという場面にはほとほと感心してしまった。さらに、戦いの途中で「刑天」が別の女に乗り移り、次の戦いの現場に飛んで行くのだが、ここでのアナキズムとロマンティシズム、フェミニズムの結合ぶりはどうだろうか。▲現実の役者の数や時間に阻まれて完全に展開しきらないのだが、ものすごいポテンシャルを持ったアイディアがいくつも出てきていると思う。ほか、魚網のダンスなどダイナミックなシーンもすばらしい。▲泣き節が出てくることは出てくるんだが、陽気なツッコミが陰惨な気配をひとつひとつ吹き飛ばしている。本年屈指の傑作だと思う。▲おそらく数十年前の、朝鮮で母親と娘が引き裂かれた残酷なシーンに収斂していくのも、「野戦之月」としては新機軸か。示す意味は深い。

  • 2009/11/07 (Sat) ...7.匠悠那/8.中谷あいみ/フィナーレ。/.../1.川中理紗子/2.翔田真央/3.藤繭ゑ。(...4.山口桃華/5.多岐川美帆/6.緑川めぐみ...)(14:45-17:42 ¥4,500-) @渋谷「渋谷道頓堀劇場」。
  • 中村綾緒『night』展。 @神保町「1号室・2号室」。...色彩ははっきりしているブレ・ボケの群像写真。舞台俳優の様に見える。公園の通行人の写真らしいが。
  • 中川晋介『tin bird』展。 @清澄白河「深川ラボ」。...最近はゲームの背景を作っているとのこと。
  • 「景 〜 projection / reflection 」展。 @名古屋 ナゴヤドーム前矢田名古屋市民ギャラリー矢田」。...染谷亜里可/近藤正勝、ほか。3階の第1室がおもしろい。在英の「近藤正勝」さん。大画面。ラフに絵の具がつけてあり、上手い。★
  • 「笹子恭男」展...色鉛筆、顔料の筆跡を重ねた絵画。/「一右衛門(わねもん)“排球愛唱歌”」展。...瞳に黒目の無いスポコン劇画の人物を筆で描いたもの。分割に工夫。 @名古屋 丸の内「ウェストベスギャラリーコズカ」。...この画廊は質と価格帯の調整上手い。作家に魅力がもっとあれば。
  • 平成21年度 愛知県立芸術大学・芸術祭「創思奏愛」。...「19」展。「内容と形式」展ほか。 @芸大通「愛知県立芸術大学・基礎デッサン彫塑教室」。
    • 「続々木祈子」さんの作品見る。背景を描かない。プール、砂場、放送局スタジオが、透視図の様に描かれ、人が集っている。何かしら奇妙な出来事が起きている。/他、具象・幻想系は「福原明恵」「岩瀬晴香」。/雨の中、学祭最中。「おじさん焼き鳥焼けたよ〜」とか知らない小娘に呼び止められた。
  • 「陶磁のこま犬百面相」 @陶磁資料館南「愛知県陶磁資料館・西館」。常設展。...阿吽二対の狛犬というのは日本だけのようだ。夫々、印度の獅子・韓国の狛犬と、出自の違うものを、日本でセットにして並べているとのこと。
  • 「志野・黄瀬戸・織部のデザイン」 @陶磁資料館南「愛知県陶磁資料館・本館」。
    • 黄瀬戸/絵志野/瀬戸黒/各種織部/陶片コレクション。「織部」というのは、緑釉・鉄絵・歪み・形抜きという特徴のある焼き物を指すらしい。釉薬のたまり。脚と耳の長い虫みたいな兎の模様。串団子の絵付け。「向付」という食器が多かった。/尾張の人間は美術館でもお喋りとまらない。爺さん暴走。