2007/09/24 (Mon) 「ショートピース! 仙台短編映画祭 2007」Gプロ。「真利子哲也(まりこ・てつや)」を見る。

かんばん



「法政大学 学生会館(市ヶ谷キャンパス)」(1973 - 2004)
「立ち退きにボヤは付き物」ということで、大学側の締め付けの下、数度にわたる失火で閉鎖・解体された「学館」。「アヴァンギャルド・ミュージック」の重要なライブが何度も開催されたことでも記憶される。「西の京大西部講堂。東の法政学館。」私も2003年の末。雪がちらつく中、閉鎖される前に一回だけライヴ見に行ったことがある。別に思い入れはないですが。

真利子哲也(まりこ・てつや)」。「学館」末期にソコから現れた映像作家。

  • 『ほぞ』 (2001)
  • 『極東のマンション』 (2003)
  • マリコ三十騎』 (2004)
  • 『車のない生活』 (2004)
  • 『アブコヤワ』 (2006) ...オムニバス『そんな無茶な!』の一篇。...作品は、この時期他に数本あり。
  • 『ニコラの橋』 (2008) ...編集、音入れ中。...2004年以降は近作までスランプだったとのこと。

『ほぞ』 (2001)

  • 寝そべる羊。
  • てるてる坊主に毛糸の髪がくっついた様なヒトの首人形。横断歩道に置いたり、公園に置いたり、ゴミ箱に入れたり。通行人の反応。
  • 新小岩のアーケード街。
  • 「マッサージどう?」の中国人のお姐さんが話しかけてくる。僕、二十歳になったばかりだよ。
  • ホームレス。ダンボール住宅。交番の巡査。
  • ボクシング人形? 狂気めいた動き。(記憶違いかも)
  • 羊が柵に首を突っ込んでいる。
  • 人形の家族が食事。
  • 建築現場やアパートの路地。
  • 顔の絵を燃やす。
  • 護国寺のホーム。
  • 鼻血が顔についたまま地下鉄に乗る。
  • 部室。椅子に縛りつけ、二人で一人を殴る。口が切れて血を吐く。水をかける。
  • 落ち着く。
  • 一人が頭を垂れて差し出したカッターナイフで腕を切る。血が玉になって出てくる。顔に塗りたくる。
  • カメラをもって汚れた格好のまま移動。自分を写す。
  • 「学館」から表に出る。自転車など蹴飛ばしながら。
  • 法政大学のお堀の前の道を、血で汚れたままで歩いてゆく。バイク、車など。
    • ビデオのクリーンな映像と、八ミリ映写器で写されたものを、もう一度撮影した映像(ガラガラという映写器の音入り)(そうなのか?)が交互に。初見では否定的な見解が多い作品のようだが、回顧的にみると興味深い箇所多い。仙台の会場でカントク自身も「羊」のTシャツを着ていたから、作者にとっても思い入れ深い作品のようだ。

『極東のマンション』 (2003)

  • 咽喉を詰めたような変な感じのナレーション。古いアパート(実は祖父の家作だ)。
  • 一人暮らしといっても自立していない。ぬくぬくした幸せ。
  • 隣の新しいマンションのベランダから景色見ている。
  • 時計、家具、摩擦音。
  • 軸を中心にカメラが回って室内を写してゆく。加工された映像。
  • カンボジア旅行。
  • カンボジアの道路をパンツ一丁で走ってまた戻ってくる。
  • 滝を写す。滝を登る。
  • 裸で木登り。
    • 両親が映像を見て文句を言う。お前がいると風景がけがれる。写し方がヘタでよくわからない。滝の迫力が伝わらない。カメラ動きすぎ。親に見せる映像じゃない。猿。原始人だ。捕まって出られなくなるよ。二度とするな。
  • 何をしたらいいかわからない。
  • テラコッタの手をいじる。
  • ぼくをこわすしかない。
  • 坐っている自分が粘土で置き換えられて行く。バットで自分の粘土像を殴る。首をへし折る。
  • 荒れた映像。ビルの屋上の様な場所。裸の男と背広の男。椅子を叩きつける。殴り合い。フィルムを縦に裂いて繋ぎ合わせた映像に変化(サンチャゴ・アルヴァレス風)。
  • 正月に母親の実家に帰る。久しぶりに顔を出す。親類の歓迎。夕食の団欒の席の静止画像を連ねる。改心。
  • けじめとして撮っておきたい映像がある。
  • ビルの屋上。雨上がり。裸足で、手すりの上に立って行ったり戻ったり。カメラで地上を写す。
  • ギリギリのところを歩く。飛び降りる。
  • 命綱を写す。屋上に戻る。
  • 空。かっこいいコメント。

マリコ三十騎』 (2004)

  • 八ミリフィルムの製造が中止された。
  • 法政大学の「学館」が閉鎖、解体されようとしている。おしゃれな新館の連中にはむかつく。
  • 「学館」の屋上から、下の通行人を撃つまね。
  • 卒論について教授と相談。
  • 教授のだべり。君の姓は変わっている。先祖は海賊なんじゃないの。うろ覚えだけど。
  • 資料あさり。発見。
  • 先祖の墓参り。...行きは歩き。帰りはスクーターというギャグ。
  • 海辺。海中から男たちが現れ、砂浜で雄たけび。あらそう。リーダーを決める? 砂の上を引きずられる。...音楽はドイツリート。子守唄か。
  • 母親から説教。仕事しろ。働かざるもの食うべからず。...大笑いされる。
  • 新館のカフェテリアの中を、「マリコ三十騎」の旗をもってストリーキング
  • 映写器のフィルムが途切れ、空回り。
  • またまたエンディングのコメントがかっこいい。

『車のない生活』 (2004)

  • じいちゃんが亡くなった。線香をあげに行く。
  • 「真利子荘」老朽化。立ち退き通知ビラ。
  • じいちゃんの車が車庫に残った。蛍光灯がチカチカ。気味が悪いので交換。思い出が残るから車を売ってしまおう。
  • 車が賞品として貰える映像作品募集広告がある。新しい車でばあちゃんを買い物につれてゆこう。
  • お母さん機嫌悪い。
  • 鏡の前で「二十三歳。無職。金にもならない映像作品を撮り続けて云々」「食事も控えて、ボディラインが云々。」
  • 事前に、広告主に車種について問い合わせ。...コマーシャル映像、テレビ番組の細部のパロディ。
  • おじいちゃんの車の車種は該当しないが、親父の車はセーフ。社用車ですけど。
    • オールデジタル。お父さん初登場。落とし話的なひねりが効いた、本人曰く「いやらしい」作品。
    • 鋭角的な感覚と腹黒いコメディセンスが同居。近代文学的な、ずばり私小説的なベースがある。話しの組み立てが巧妙。時間をかけて見せるセンスがある。「河瀬直美」に比べ、分かりやすいといえば分かりやすい。