「仙台衝劇祭 2007」モニタリング02.(未定稿にしたい)

ちらし



2007/09/22 (Sat) - 09/23 (Sun) もしもしガシャ〜ン『生まれ晒し みちのく編』 @仙台 五橋「Gallery One LIFE」...「仙台衝劇祭 2007」セクション 0 4.


初日...(19:00-20:53)

とうとう生れかけているのかも知れない。日本の現実をたっぷり引きずった「次世代不条理演劇」が。
日本の不条理劇の新しいミューズ(と呼んでいいでしょう)「たかはしみちこ」絶好調。
独特な調子で寸断、飛躍、逆ギレする言い回し。大阪の「未知座小劇場」の時は、何か全体の調子を壊しているような感じがしていたのだが、今回は確実に一つの世界(圏)を作っていた。
ベケットに近い感触が奥の奥にずっと流れている。別役の『マッチ売り』をもじり的に悪乗りさせてゆくような箇所もあり。

独創的といってもいいだろう荒々しいナンセンスなやり取り(「どくんご」的ともいえるが)。食べ物がでてくる結節点。
あっと思うような部分や、パワフルな見せ場も、前回に増して用意されている。

前作『生まれ晒し』(2006/12 新宿タイニィアリス版)と比較すると、人物の関係が全面的に書き換えられている。
引きこもりの風俗嬢とそのなじみの客という設定だったと思うが、今回は、オンボロアパートから立ち退きを拒んでいる不法滞在者と不動産業者。何度も通って来ているので顔なじみになっている。

ただ、残念な箇所も無いわけではなく、手垢のついたイメージが出て来るとガッカリ(キリスト教的なイメージ。権力とか威光の風刺。昔の小劇場風に子供時代の思い出がどうだとかこうだとか出てくる箇所)。
ネタに細かい矛盾がある。日本人じゃないはずのに、日本人ならおにぎりとか。

設定を曖昧に取りこぼしてゆくんじゃなく、踏まえるなら踏まえる。カフカ的に(?)途中で逆転させるなら、きっちり掴んで投げを打って欲しい。

素晴らしいところが最期まで貫徹しないが、これから盛岡、新潟へ遠征公演。前半部の仕上がりだけでも見ておいて損は無い。後半の数箇所もすごいです。

初日。しかし観客に演劇関係の人が多い。3分の1位はそんな感じか。ミュージシャンズ、ミュージシャンみたいな支持のされ方をしているのかも。


2007/09/14 (Fri) - 09/17 (Mon) 文月奈緒子作品集『GO!』『ダウン』『スリップ』 @仙台 五橋「Gallery One LIFE」...「仙台衝劇祭 2007」セクション 0 3.

初日...(19:35-20:28/20:30-21:04/21:12-22:04)

『スリップ』『GO!』。休憩を挟み『ダウン』の順番に上演。

『スリップ』。舞台上には三人の俳優しかいないのに、戯曲上の登場人物は五人。さあどうなるか。

田島(舞台になる部屋の持ち主)
村上(最初の訪問者)
木村(交通事故を起こした人物)
マサミ(村上の婚約者)
田中(村上の知人)

映画『転校生』の大林宣彦的な仕掛けを、ある種ゲーム的に無制限に適応させた、性と死と暴力の狂騒曲といったところか。
当事者なのか第三者なのか曖昧な「あぶれ者」が瞬間的に生れ、ステージの隅で遊び始める所が面白い。
伝統的な怪談の「憑依」「キツネ憑き」の現代化ともいえる。
「永澤真美」さん改めて認識しました。
しかし時代が変わるのは早い。「性同一障害」は、病気ではないにしても先天的な障害で、保険はまだ利かないにしても「治療」という概念はありえる。
仙台有数のクラシック楽団のメンバーでも、勇気をもって「カミングアウト」した方がおられるそうな。
ただ、人に触れるとある変化が起きる、という仕掛けは、東京の「イキウメ」という劇団の『散歩する侵略者』という戯曲、劇で絶頂を迎えたでしょう。
機会があれば、お読みになってください。

『GO!』は方向音痴のドライバーが主役のコミックリリーフ(書下し)。
小学生に道を聞くエピソードはさすが。

『ダウン』。「春日町あんだあぐらうんど劇場」の再演。
こういう人たちの世界は、宮城野区の古い団地に現にあったりして。
中産階級」的な仙台の社会(?)に痛烈な一撃、とでも言いましょうか。
人倫に反する、というか、文化的な侵犯がこれでもかと出てくる。
白い“キャニスター”を覗く場面があるのですが、お話しの内容の割りに入れ物が小さいので、いったい中がどんなことになっているのか考え始めると止まらない。
あの姉の嫁ぎ先がどんなことになっているのか、これも考え始めると止まらない。
どうしても江戸時代の南北とか残虐な錦絵を連想してしまう。まさしく日本の芝居だなあと。
この路線は、『東仙台物語』(未見です)の裏バージョンのような感じで推し進めて欲しいものだし、どなたかにも是非引き継いでいただきたい。


2007/09/08 (Sat) - 09/09 (Sun) 『くるくる哀歌』(よしこ) @仙台 五橋「Gallery One LIFE」。...「仙台衝劇祭 2007」セクション 0 2.

仙台初日...(15:00-16:46)

見世物小屋。出番が来るまで閉じ込められた場所で稽古と双六とごっこ遊びで過ごす5人の“姉さん”たち。一人を除いて歩けない。トチリの激しい一人が突然居なくなり...。

残酷悲惨な状況下で変態を遂げる人間の意識が題材。戦後フランスに登場した思潮の流れにもある、いわば由緒正しきアングラ派。寺山系か。

盛岡には先日亡くなられた大泉千春さんも所属していた「赤い風」という“明るいアングラ”と言われた劇団が存在。受容を考えたアングラ?! その様な演劇風土を示す劇団か。

そんな中でも「よしこ」さんの自己規定が気になる(「毒のあるファンタジー」)。そして戯曲主義。美術は凝っているにしても額縁舞台だし。漂白されつつあるアングラとでもいうか。手仕事化した見世物小屋とでもいうか。

具体的には足が使えない描写をしていないことに泣き所があるのではないだろうか。長い衣装で体全体を覆っており、実際には演技者が足を使っても分からない。いやリアルにやろうというのでは無く、その様な約束事として処理したらもったいないというか。

不自由な身体は、暗黒舞踏的なものが生れる契機だったはずだし、乱歩の『芋虫』を、ort-d.d.が舞台化しているが、傷痍軍人は黒い背広服のまま横たわって演じていたはずだ。描き方で大きく効果が異なる一つのポイントだったように思う。

本質とはまったく関係ないんですが、一人だけ足が無事な「姉さん」役の女優さん。ビスクドールの様なお顔が、埼玉のテント劇の雄「どくんご」の時折旬さん(男性俳優)に似ていて興味深かったでがんす。