「日本アンダーグラウンド演劇」まだ山川三太「傾きの故郷 二部作」の続きです。参考資料。

ハシレ


野田秀樹走れメルス』(1976) ※初演版ではなく改定されたもの。

  • 01.こちらの岸でのくりごと。
    • 下着泥棒久留米のスルメ。物干し台で(父親に向けて?)独白。
  • 02.向う岸でのもめごと。
    • 巨大レコードジャケットが開く。
    • アイドル歌手メルス・ノメルクの追っかけ少女三人。年江、花江、歌江。
    • 三人の母、評論家桐島洋子
    • 玉握突造と蟒零子の結婚式場。ゲストはメルス。七人の刑事登場。零子とメルスが駆け落ちした。メルス探しにみんな居なくなる。
    • 零子とメルス。狂言誘拐だった。零子に強要されたらしい。メルスの鏡コンプレックス(!)。模擬引退公演風に一人で歌う。回文風の謎の言葉でてくる。
  • 03.こちら岸でのたわごと。
    • あばら屋。芙蓉の下着を盗もうとするスルメ。芙蓉に誘惑される。
    • 百太郎、美人局風に出て来てスルメを押さえる。スルメ逃亡。百太郎、芙蓉を口説くが...。
    • 百太郎の父、大地主が登場(アングラ風?の奇怪な人物)。
    • 大地主と百太郎で芙蓉を取り合う。芙蓉と地主、意外と話が合う。
    • スルメ捕らえられて引き出される。
    • 大奥様(百太郎の母親)登場。自分の下着が盗られないので怒り狂っている。
    • スルメを調べる形で力学論に。
    • 三人、宙に浮かぶ。
    • 火事騒ぎ。大地主一家の土地論議
    • 地主たち、宙に浮かぶ(瞬間、二役の「七人の刑事」に変わる)。海。暗転。
  • 04.こちら岸でのあだごと。
    • 蚊帳の中? スルメと芙蓉が話している。青春歌集と角砂糖の灯火の場面。回文風の謎の言葉、繰り返される。
  • 05.向う岸でのなきごと。
    • レコードジャケットが開くと、女性用トイレ。メルスを探す七人の刑事が現れ、新聞紙を見てゴチャゴチャ騒ぐ。中に紛れ込んでいたメルス、混乱。
    • 零子登場。新聞を読みメルスをからかう。アングラ風独白と相対性理論的腐れ縁の話。
    • 桐島親子が登場。メルス便器の中へ。零子、少女たちをからかう。桐島家の紋切型教育。女子トイレが大磯ロングビーチに。
    • 便器から出るメルス。少女たちがまた来る。
    • レコードジャケットが開くと少女たちの原色の部屋。誕生会。角砂糖の灯火。
    • 七人の刑事が侵入してきて、メルス捜査、と称しスカートめくり。灯火の向こうにメルス発見。追って行く。
    • また少女たちの部屋。刑事たち現る。同じことの繰り返し。プリズム効果か。
    • 三回目。意地になっている。タロット占いに従ってメルスを追う。
    • レコードジャケットがめくれると、女子トイレ。零子とメルス、トイレの窓の向こうを見ながら話す。メルスの自我の危機(?)と子供時代の風呂場での戦艦遊びごっこ再現。
    • 追っ手迫る。ジャケット閉じる。
  • 06.こちら岸でのざれごと。
    • 群集がスルメを追い立てる(スルメの夢)。芙蓉が語る、青春歌集の中のある挿話。川の向う岸の、前世から契りをかわした男の話。スルメが嫉妬する。
    • 百太郎が床下から出て来てプロポーズ。フラれる。芙蓉と、戻ってきたスルメ、蚊帳の向こうに消える。
    • 大地主と大奥様。じゃんけんで子づくり。芙蓉の鏡台が熱い。火事が起きている。
    • 鎮火。百太郎現れ、二人に火事の原因が芙蓉であることを説明。意味不明の内容だが、父親は納得する。
  • 07.向う岸からこちら岸へのアプローチ。
    • レコードジャケット最後のページめくれる。向う岸の見える海。零子とメルス、石鹸箱の戦艦で航海中。
  • 08.向う岸でのままごと。
    • レコードジャケットが絵巻物の様に広がる。ゼンマイ仕掛人形になった俳優たちが登場。
    • その内三体が三人娘。メルス人形が壊れたと泣く。母親は、向う岸に行った男はタロットの愚者だ、虚構のお話だと説得。
    • 記者会見。人形たちを撮影した写真が撮られる。七人の刑事と零子の談話。
    • むしろを被されたメルスが引き立てられてくる。めくると誰もいない。捜査再会。
  • 09.こちら岸でのひめごと(あなたと私のブラックホール)。
    • メルスと芙蓉が出会ってしまう。謎の回文の意味がわかりそう。二人鏡台を挟んで実験。スルメ嫉妬。
  • 10.こちら岸でのしれごと。
    • スルメ、物干しからジャンプ。布団を刺す。もぬけの殻。
    • 師走。スルメ、芙蓉を問い詰める。青春歌集のことは全部作り話。
    • 青春歌集すり替えられる。学生服の大地主一派現る。
    • 大奥様一派現る。男たちを追い払う(スルメは無視、地主は変装して戻る)。
    • 歳末の福引き。奥様が福引き券(タロット)をばらまく。芙蓉の母親譲りの券も紛れ込む。スルメ助言するが...。
    • ムシロがめくれると福引き会場に。零子とメルスの人形が入ってくる。群集シーン。
    • 人形化(写真の再現)。メルスと芙蓉だけ人間のまま。花嫁衣装の零子の人形、去る。メルス、芙蓉に促されても決心つかず、動揺。名乗りが上げられない。
    • 元に戻る。メルス、心身喪失。スルメが物干しに現れ放火。台が反転する。
  • 11.どちらの岸とも知れぬすんでのこと。
    • スルメとメルスの対峙。スルメ、自分がメルスだと宣言。
    • セメント工場に火が回る。
    • スルメと芙蓉、話が食い違う。芙蓉、鏡台に向って話す。スルメ、芙蓉を(布団ごと)刺す。
    • 七人の刑事、逮捕に来るが、火がまわっている。崩れ落ちる建物。
    • 芙蓉の遺体。生き残ったスルメと、影になったメルスの独白二重奏。
  • 12.こちら岸からのおこごと。
    • 大地主と手下。火事場で七人の焼死体を発見。屑拾い業を再開するという。
    • 焼焦げた青春歌集の山。


      • スピード感。転換も早いんだろうが、要するに場面数が多いということ。場面を刻んでいるということ。
      • 芸能ネタ、テレビネタが多い。それも一昔前の。『七人の刑事』→『太陽に吠えろ』とかにしないのだ。意識してるのか。
      • 野田秀樹は新しい形式とそれにふさわしい(軽い?)内容を持ち出したということか。
      • 「チャンコロ」だの「穴(ケツ)」だのの言葉が出てくる。
      • 例えば野田劇だと、いい年した大人が子供のふりして。鴻上劇だとなんとも鼻持ならない物言い。感覚的に不快に感じたので80年代演劇は完全にスルーしていた。あとファンがオタクの走りでこれも気色悪い。
      • 要するに『伊豆の踊り子』『時を駆ける少女』的なレパートリーを作りたかったのか。
      • 若者専有文化の演劇版を作ろうということか。
      • 後半のケレン、スペクタクル。
      • 青春と愛の殺人。古典劇のもじりが重なる。